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先進校レポート

昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校 岡野内理恵先生・勝間田秀紀先生

昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校は、1920年に創立され、今年で95周年を迎える伝統校です。「世の光となろう」を建学の精神とし、また「清き気品・篤き至誠・高き識見」を校訓に掲げ、社会で活躍する女性を育て、送り出し続けています。同校は2014年度より「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」の指定を受け、これまでの伝統と、新しい取り組みとを融合させた新プログラムをスタートさせました。今回は、高等学校教頭の岡野内理恵先生、SGH実行委員長の勝間田秀紀先生にお話を伺いました。

昨年度よりSGHとしての歩みを始めていらっしゃいますが、文科省への申請や、新たなプログラム作りにあたってはどのような過程がありましたか。

(岡野内) ゼロから全く新しいことを始めようとするのではなく、今までやってきたことを精査・発展させれば認められるのではと考えていました。準備期間がとても短かった中で、冬休みに先生達が集まって何日も議論をし、方向性を作り上げていきました。大学附属である強みを活かし、大学にも連携を持ちかけました。

以前からグローバル教育には取り組んでこられていたのですね。

(岡野内) 例えばイギリスへの短期留学は40年以上の歴史があり、全員がボストンへ留学するプログラムも10年前から続けています。そうした取り組みを系統的に整理した上で、大学と協力してさらなる発展を試みているのが現在です。もちろん「グローバル=海外に行くこと」だけではありませんので、日ごろの生活にその要素を取り組むことも伝統的に行っています。毎週金曜日の「English day」もそうですし、お菓子の持ち込みまで許されるブレイクタイムのように欧州の伝統を取り入れた活動も特徴の1つです。

貴校がSGH校として掲げた「デュアル・グローバルプログラム」という構想には、どのような意図があるのでしょうか。

(勝間田) グローバル教育を行うにあたっては、高校の中だけで何かをするのでなく、大学や企業と連携していくことが、生徒のキャリア形成に向けても意義があると考え、このように命名しました。目標は、実社会でグローバルに活躍できる女性リーダーの育成です。本校では、そのために必要な資質として、「国際的素養」「国際的教養」「人間性」の3つを挙げて、プログラムを編成しています。

それぞれの資質を、どのように育てられているのでしょうか。

(勝間田) 「国際的素養」は、高1・2の中から選抜された学生が研究活動を行う“SGグループ”や、海外での経験を通して問題解決能力・コミュニケーションを養う中で育てていきます。“SGグループ”では「企業や個人で活躍する女性グローバル・リーダー」「日本人女性のジェンダーギャップ」など、グループごとにテーマを決め、企業や大学から招いた講師の指導も受けながら研究活動をしています。「国際的教養」は海外研修の事前・事後学習や、各方面の専門家に「女性」「グローバル」などのテーマで語って頂く講義を通して身に付けさせています。様々な講師をお招きできるのは、大学との連携を始めたおかげと言う部分もあります。 そして、「人間性」は全員参加の「サービスラーニング(社会奉仕体験学習)」を通して育んでいます。これは「座学」の対極に位置づく「行学」だと考えており、知識だけでなく実際の行動を通して社会に関わっていく、貴重な体験の時間になっています。

1つ1つがとても大がかりな取り組みだと思います。実現していく上での壁はありませんでしたか。

(勝間田) 先ほども申し上げたように、元からグローバル教育には取り組んでいたことが支えになっています。また、このプログラムの中では異学年交流も行われますが、これも「朋友班」という縦割りグループが以前からあり、親睦を深めていたおかげで、問題なく行えています。

(岡野内) 何よりも、生徒たち自身の熱意に励まされている部分が大きいです。SGH認定を受けたことへの教員の反応は様々でしたが、自主性に富んだ生徒たちが自ら研究への意欲を見せ、教員たちの心を変えてくれました。もちろん心配しながら見守る時もありますが、基本的には自主性を重んじています。生徒たちの持つ力・可能性はすごいと日々感じています。

SGH校に認定されてから、何か変化はありましたか

(岡野内) 今まで以上に、アジアにも目が向くようになりました。SGグループのうちの1つはカンボジアに行って、現地で活躍する日本人女性リーダーの姿を学びました。同じくカンボジアの研究をした3校(広島女学院、西大和学園、四日市高校)と合同の発表会も計画しています。他校と交流できると、どこも熱心にやっていることが分かり、苦労もお互い共有できるので良いなと感じています。他に、途上国で暮らす女性の社会進出について研究するグループもあり、こちらはタイでの研修を行いました。ベトナムやマレーシアへの研修旅行も希望者を集めて実施しており、生徒たちの視野を欧米以外にも広げられるようにしています。

本日はありがとうございました。

[聞き手:コアネット教育総合研究所 新教育推進室 室長 川畑浩之
2015年11月取材

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