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先進校レポート

同志社国際中学校・高等学校 校長 川井国孝 先生

同志社国際中学校・高等学校は1980年に、帰国生受け入れのための高校として、京都府京田辺市に設立された。校名が示す通り同志社大学の系列校で、元をたどれば創立者は新島襄。新島は江戸時代末期にアメリカへ留学し、アメリカの大学を正規に卒業した初めての日本人であり、いわば、日本初の帰国生ということになる。そのような伝統を背負って設立された同校は、その多様性が生み出す教育が特色となって、いま大変な人気校になっている。校長の川井国孝先生にお話を聞いた。

帰国生を多く受け入れている学校なのですね。

そもそも帰国生を受け入れるために設立された学校なのですが、現在も一般生は3分の1で、3分の2は世界の様々な国々からの帰国生が占めています。本校の特色は、帰国生と一般生を混成クラスにしていることです。これだけ帰国生が多いと、別クラスに分ける学校も多いと思いますが、本校はあえて同じクラスにしています。

なぜ帰国生と一般生を同じクラスにするのですか。

帰国生は世界の様々な国で生活した経験を持つ多様な生徒たちです。その帰国生と日本でずっと生活をしてきた一般生が同じクラスで学校生活を送ることで、多様な文化や価値観を共有するようにしているのです。そのことで、世界には様々な生活様式があるとか、自分とは異なる価値観があるということを知るチャンスになります。たとえば、ふつう日本人は控えめで、積極的に発言する生徒は少ないのですが、帰国生の中には、欧米的な価値観で自己アピールが強い生徒もいます。はじめはビックリしますが、一緒に生活をする中で、お互いを理解して付き合うようになっていきます。

帰国生と一般生では英語力に差があるのではないでしょうか。

英語の授業は習熟度別にクラスを分けて行っています。英語力で、Sa、Sb、Gという3段階のグレードがあるのですが、ホームルーム2クラスを4つのクラスに分けて授業を行っています。学年によって違いがあるのですが、Sa、Sb、G、Gという4クラスに分ける場合もありますし、Sa、Sb、Sb、Gという4クラスに分けることも可能です。いずれにしても通常クラスの半分の少人数で授業を行うことできめ細かい対応が可能です。帰国生の中には、国語や社会が苦手な生徒もいますので、そちらも別クラスをつくってケアをしています。

英語の習熟度別授業はレベルや内容がどのように異なるのですか。

英語初修者が多いGクラスは、英文法や構文などを基礎から学ぶ授業を行っています。一方、ネイティブレベルの英語力を持つ生徒が受講するSaクラスは、英語の原書を読んだり、社会問題について英語でディスカッションをするような授業を行っています。中1の始めは差も大きいのですが、すぐに実力を上げて、クラスを変わる生徒もいます。定期テストごとにクラス替えが行われますが、中3から高1に上がるタイミングに、GからSbに変わる生徒がたくさんいます。

留学制度などはありますか。

学校としては、国際交流として短期留学プログラムを用意しています。中学生でも参加できるプログラムや英語力がそれほど高くなくても参加できるプログラムから、かなり高度な英語力を要求されるプログラムまで、10以上の留学プログラムが用意されています。だいたい2週間から1ヶ月半ぐらいまでの期間の留学プログラムで、新島襄が学んだフィリップス・アカデミーに行くプログラムやハーバード大学のサマースクールに参加するプログラムなどもあります。毎年100人ぐらいが参加しています。

高校卒業後の進路はどうなりますか。

海外大学に進学する生徒は毎年5〜6名です。国公立大学や東京の難関私立大学に進む生徒も何名かいます。しかし、卒業生の9割は内部推薦制度を使って同志社大学または同志社女子大学に進んでいます。学校としては、海外に進学したい生徒にはきちんとサポートをしています。国内の大学を受験したい生徒にもしっかりとサポートしています。そして、同志社・同志社女子大学に進みたい生徒には、大学に入学してから役に立つ力をつけるよう指導をしています。

英語力があるからといって、誰にでも海外大学だけを勧めるようなことはしていません。海外大学進学には本人の適性や家庭の事情も考慮しなければなりません。国際教育センターがしっかりとガイダンスを行って進路を選択してもらっています。その結果、海外大学への進学を決めた生徒には、手続等にきめ細かなサポートを行っています。

英語力以外にグローバル時代に必要な力を身につけさせる取り組みをしていますか。

本校には「違いという共通点からの出発」という教育テーマがあります。グローバル時代にはその考え方が必要だと思います。異なる文化を認め、尊重して、対等に意見交換できる人を育てたいと考えています。

そのポリシーが形になったのが、コミュニケーション・コンプレックスです。図書館とコンピュータ教室と視聴覚教室が一体化したコミュニケーション・センター、生徒たちが気軽に集うコミュニケーション・カフェ、舞台と客席が用意されプレゼンテーションの場となるコミュニケーション・ホール、光が差し込む屋根を設けた全天候型フリースペースのコミュニケーション・プラザ。それらが統合されて、生徒たちのコミュニケーションを促進しています。

コミュニケーション・センターは素晴らしい施設ですね。

従来の図書館の概念を超えた施設になっています。本校の授業は教室の中だけで完結しません。このコミュニケーション・センターには、同時に5クラスが授業を行えるスペースがあります。ここに来て、書籍、映像、コンピュータなどメディアミックスのコミュニケーション授業を行うのが本校の授業スタイルを象徴しています。情報を集め、それを精査してまとめ、発表する――そのすべてを行えるのがこの施設の特徴です。

理系科目は大学に進学してから必要な知識を身につけるために、どうしても講義中心の授業が多くなりますが、文系科目では、調べ学習を中心としたプロジェクト型学習を多く取り入れています。その中心となるのが、コミュニケーション・センターです。

最後に、これからの貴校の発展について教えてください。

今後、世界はますます垣根がなくなりグローバル化が進んでいきます。そうなると、やはり、自分とは異なる文化を認めながらも、対等な立場でコミュニケーションできる力が必要になります。本校でも国際バカロレア(IB)の研究をしたり、教員をワークショップ(研修)に参加させたりしています。IBの認証をとるということではなく、グローバルスタンダードの考え方を学び、自分たちの教育を進化させていきたいと考えています。

ありがとうございました。

取材で訪れた10月下旬、校内はハロウィンの装飾で彩られていた。コミュニケーション・センターも楽しげな雰囲気にデコレーションされており、生徒たちを吸引するコミュニケーションの中心になっていることがよく分かった。校内には交換留学でちょうど訪れていたフランス人の生徒たちが活動しており、居ながらにしてグローバルな雰囲気を味わうことができた。

「違うっておもしろい」――この学校のキャッチフレーズが理念をよく表していると感じた。

[聞き手:コアネット教育総合研究所 所長 松原和之
2013年10月取材

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