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特別レポート

Global Challenge Program in NY 2014-2015 実施報告

今年で2回目となる「Global Challenge Program in NY」が終わりました。 このプログラムは、全国の中高一貫校の中学3年生を対象にした、「アクティブラーニング」型の教育プログラムです。グローバルをテーマとして、1月~3月に事前学習、3月24日~30日、5泊7日のNYプログラム、4月29日に事後学習を行いました。
今回は、100名を超える応募者の中から、選抜した22名(男子8名、女子14名)が参加。
選抜から事後学習までの半年間の教育プログラムでした。
今回のレポートは、プログラム開発と初回、今回の2回の引率・生徒指導に関わった経験から、実施報告とプログラム開発のポイントを報告します。

期待する「学修成果」

グローバル社会に対応するための「スキル」として設定した8つのスキル(図1)に加えて、今回は以下の3点を重視した。

(1)グローバル社会で活躍するイメージと必要なスキルを体感すること

  大きな可能性を持っている生徒たちが思い描く「将来」には、グローバル社会での活躍をイメージするだろう。漠然としたイメージをできるだけ「クリア」にすること、そしてそのためには、「何が必要か」「何が求められるのか」ということに気が付くことが重要と考え、実際に生徒に体験させることを重視した。

(2)チームで「創造すること」の難しさと達成感を経験すること

 5~6名のチームを編成して「紙面作成」を行い、プレゼンテーションに勝利することを課題として設定した。断続的ではあるが、出会って1週間という期間で、メンバーの相互理解や課題の解決のための役割分担、期待する行動を行うことの経験をさせることで、関係性を構築する力、新しい価値を創造する力を育成することをねらいとした。

(3)(1)~(2)の経験から、将来の目標と課題を発見すること

 中学校までの学習やNYでの活動から、将来の目標設定や「自らの振り返り」を行うことができる。その結果として、4月から始まる高校生活に、意欲的に取り組むためのモチベーションを上げることをねらいとした。

 

事前学習のポイント

 結論を先に述べると、育成したいスキルや期待する「成果」を明確にして、そのために必要な学修プログラムを構築することと、そのことを参加メンバーにしっかりと告げることがプログラムのポイントなる。事前学習ではプログラムの意図や目的、評価方法などを伝えることが必要となる。

 今回は、「NYで新聞記者になり、現地での最終プレゼンで最優秀チームを決める」というミッションを設定した。

 そのため、掲載される新聞(正確にはフリーペーパー紙)の読者層の確認、つまり編集部から期待される内容やトーンの理解を行うことからスタートさせた。そして、評価の項目や基準を提示して、「いつまでに何を行うことで、高い評価を得ることができるのか」ということを伝えた。

 公募により参加する生徒のため、学校開催とは異なり、時間を共有させることが難しく、メールでのやり取り、事前課題を提示して、自宅での作業などを課した。また、NYの取り組みは限られた時間であるため、段取りや意見交換の「やり方」などの「ハウツー」を十分に教えることも大切となる。

5泊7日のNYインターンシッププログラム

 8つの企業とコロンビア大学、国際連合という用意された取材対象に加えて、チームが自ら考えた取材を行うことを経験する5泊7日間。紙面を作成することをイメージしながらも、自ら関心があることを質問していく。ここでは、チームの編集方針を作りながらも臨機応変に現状に対応することが求められる。

 本プログラムでは、半日間(4~5時間)のフリー取材の内容が、他チームとの紙面づくりの差別化をさせる部分となるため、メンバーは意欲的に取り組んだ。

 だからこそ、メンバー同士での意見交換も活発になり「揉めること」もあるが、むしろ良い経験となる。他者の良いところを見つけ、議論を進めていくことが大切であることに気が付く。

 今回のプログラムでは、取材という行為そのものが「自分探しのためのヒアリング」という構図にもなっている。例えば、「グローバル社会で活躍するための必要なことは何か」「どのような経験をして職業選択をするのか」「意見や国籍が異なる人たちと一緒に働くために必要なことは何か」など、生徒自身の将来に直結するような質問を行い、自分たちなりにまとめる。

 まとめることは、頭の中で考えているだけの自分の意見について、文字にしたり他者と意見交換をしたりする作業を経て、「見えている」状態をつくりだすはずだ。そのことで、「将来を見通すこと」「将来に対して何が足りないのか」という、これからのキャリアに必要な視点を身に付けることができる。

今回のプログラムからの示唆

(1)生徒の可能性に期待する~失敗をさせることも必要

 体験型のプログラムの場合、(怪我などのトラブルは回避するとしても)できるだけ生徒が失敗しないような配慮をしがちである。アクシデントはあるものとして、あまり口出しをせずに、臨機応変に対応させ、生徒自身に解決させることも良い経験となる。

(2)学んだ成果の確認を行うこと

 体験型のプログラムの場合、直接経験があるため、その経験だけで生徒は「満足」しがちである。だが、必ず事後学習を行い、できたことやできなかったことを確認させる段階が必要である。むしろ、できなかったことからの方が「学び」がある。なぜなら、次に設定する「課題」や「目標」になるからである。

(3)育成したい成果からのプログラム開発であること

 アクティブラーニングの基本となる点と思うが、「何を育成するのか」という点からのプログラム構築でないと意味がない。育成したいスキルを「どのようにすれば獲得できるのか」「教員だけで獲得させることができないのであれば、どのようにすれば獲得させることができるのか」という発想で、プログラムを構築すると良い。誤解を恐れずに言うならば、教員自身が「ワクワクするような内容となる」レベルまで引きあげるプログラムとしたい。

[レポート:コアネット教育総合研究所 川畑浩之/笠利かな
2015年10月

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