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イシュー

グローバル教育 気になるキーワード VOL.5 ルーブリックルーブリック
解説:コアネット教育総合研究所 所長 松原和之

「本校ではルーブリック評価を取り入れてます」と聞いて、「え!?、あのカチャカチャと回して立方体の面の色を揃えるオモチャ?」と思わず言ってしまい、「それは、ルービック(キューブ)だろ!」と突っ込まれたあなたへ。いま大学や私立中高一貫校などで導入が進んでいる「ルーブリック」(ルービックではない!)について、分かりやすく解説します。

ルーブリックとは?

「ルーブリック」は一言でいうと、生徒や学生の学習到達状況を評価するための評価基準のことです。ルーブリックは複数の項目から成りますので、それを一覧表にしたものを「ルーブリック表」といいます。
そして、そのルーブリック表を使って評価する方法を「ルーブリック評価」と呼んでいます。

まずは、ルーブリック表の例を見てください(下図)。

ルーブリック表の構成ってどうなっているの?

評価する項目(これを「評価規準」といいます)が左端に縦に並んでいます。ここでは、プレゼンテーション力に関する4つの評価規準が記載されています。

例えば、「目線」という評価規準の行を横に見ていってください。左から4、3、2、1と並んでいますが、それぞれの評価に値する基準が書かれています。ここに書いてあることが出来ていれば、このランクの評価が得られるということです。

よく見ていただけると分かると思いますが、右が一番ハードルが低くて、左に行くにつれて、出来ていなければいけないことが増えたり高度になっていますよね。

「聞き手とアイコンタクトを保ち、手元の資料はほとんど見ていない」なんて、なかなか大人でも出来ないかもしれません。だから、ここまで出来ていれば4点満点の評価がもらえるというわけです。

ルーブリックを使った評価の方法は?

ルーブリック表のイメージはついたでしょうか。この表を使って生徒を評価することになるのですが、では、どうやって評価を行うのでしようか。

基本は、先生が生徒の学習活動を見ていて(観察して)、この表の基準に従って、一人ひとり評価するのですが、30人も40人もいるクラスの生徒を同時に見て評価するのは難しいですよね。

そこで、いくつかの工夫が必要になります。1つは、複数の先生が見るという方法です。1人の先生が授業を進めている間に、別の先生が生徒一人ひとりを観察して評価するのです。

もう1つは、生徒の自己評価及び生徒同士の相互評価を活用する方法です。毎回の授業の最後に、生徒がアンケートに答えるような形で自己評価をします。もしくは、生徒がお互いに評価できるような内容であれば相互評価をします。例えば、生徒が全員の前でプレゼンテーションするような授業だった場合、発表した生徒のことを、聞いていた生徒が評価することができます。

そのほかにも様々なシーンで生徒が自己評価したり相互評価する場面が考えられます。そのような評価をためておいて、先生の観察と合わせて総合的に評価するのです。

自己評価なんて出来るの?

ここで、少し疑問がわいた方がいらっしゃるでしょう。生徒が自己評価や相互評価評価なんて出来るだろうか。出来たとしてその評価は正確なのか。

そうです。評価には常に、客観性や妥当性の問題がつきまといます。先生が評価したって妥当かどうかは完全には担保されません。

この点、ルーブリックは他の評価に比べて客観性が保てるような仕組みになっています。というのも、先に見たように、基準が明確に設定されているからです。文部科学省が定めている観点別評価は、「十分満足できる」「おおむね満足できる」「努力を要する」といった大雑把な尺度でつける評価なので恣意性が高くなります。それに比べるとルーブリックは、何が出来ているとその評価なのかが明確なので客観性が高くなっています。

ルーブリックは生徒も見るもの?

そして、ルーブリック評価で大事なことは、授業や単元が始まる前に、生徒にもルーブリックを確認させることです。つまり、これから行う授業で何が出来るようになったら評価が高くなるのかをあらかじめ意識しておけるのです。授業におけるインフォームド・コンセントとでも言いましょうか、説明責任を果たしているのです。

このことで、生徒はルーブリックで示されている項目(評価規準)を意識しながら学習することになります。後ほど説明しますが、ルーブリック評価は、ペーパーテストで確かめにくい能力について評価する時に力を発揮します。例えば、コミュニケーション力のようなものです。それは同時に何が学習のポイントになっているかも分かりにくいのです。ルーブリックが示されることで、先生も生徒も目標を共通認識することができます。つまり、生徒も自己評価や相互評価が出来るということです。

ルーブリックがメタ認知力を育てる?

さらに、この目標を認識して学ぶことは、生徒のメタ認知力を高めることにつながります。メタ認知力とは、自分がいま何を学んでいるかを認知できる力です。成績が悪い生徒の多くは、何が分からないのかも分からない子です。何が分からないのかを分かっている生徒は自力で修正をかけることが出来ます。問題を解いて間違えていた時も、間違った点が把握できているので、次からは間違えないようになります。ところがメタ認知力がない生徒は、同じ間違いを繰り返します。話は逸れましたが、このメタ認知力というのは、学力向上の大きなポイントなので、頭の片隅に置いておくと良いと思います。

なぜルーブリックが注目されているの?

さて、では、なぜルーブリックが注目されるようになったのかという経緯について説明しておきましょう。

文部科学省はかなり前から新しい学力観について打ち出していました。グローバル化が進む世界の中で、社会に出て活躍するための資質・能力が変化してきました。そこで、学力の定義を変え、学力の三要素を明確に提唱しました。それが、①基礎的・基本的な知識・技能の習得、②これらを活用して課題を解決するための思考力・判断力・表現力など、③主体的に学習に取り組む態度、です。これまでの日本の教育は、①に偏りがちでした。しかし、②や③を重視せざるを得ない状況になっています。

そこで、②や③の学習に力を入れるために、アクティブ・ラーニングが登場しました。

しかし、学習には評価がつきものです。評価をしなければ、何が身についていて、何が身についていないのか分からず、次に何を学べばいいのかも分かりません。

ところが、①の評価は知識を覚えているかいないかなので、ペーパーテストで確かめられます。しかし、②や③はどうでしょう。②については記述形式のテストであれば一部確認することが出来ますが、大部分はペーパーテストでは無理でしょう。そこで、注目されるようになったのが、ルーブリックです。②や③のように、いわば目に見えない学力を可視化するための評価方法としてクローズアップされたのです。

ルーブリックはどんな時に使うの?

ルーブリックは、主に知識・技能以外の学力を評価するときに用いられます。私立学校で導入が進んでいると先述しましたが、私学は学校ごとに目標としている学力の要素が異なりますので、学校ごとに異なるルーブリック表が作られています。といっても、まだまだ日本の中学校や高等学校ではほとんど導入が進んでいないので、実際には、オリジナルのルーブリック表を持っている学校は少ないと思います。

ルーブリック表では、いくつかのカテゴリーに分け、その中にいくつかの評価規準を設けます。カテゴリーは例えば、①知識獲得力、②思考力、③創造力、④問題解決力、⑤文章コミュニケーション力、⑥口頭コミュニケーション力、⑦組織的行動力、というような内容です。「⑥口頭コミュニケーション」というカテゴリーの中に、「⑥-1.構成」、「⑥-2.言葉」、「⑥-3.話し方」、「⑥-4.サポート資料」、「⑥-5.中心的なメッセージ」という評価規準が設定されているイメージです。こうやって考えると、知識・技能以外にも、子どもたちが身につけなければいけない学力というのはたくさんあるんですね。

まとめ ~ルーブリックはアクティブ・ラーニングに欠かせない!

もう一度、ルーブリック表の例を見てください。この力をペーパーテストで採点するのは難しいですよね。かといって、先生の独断で何となく4段階の尺度で評価をつけられるのも嫌ですよね。ということで、評価する点(評価規準)を明確にし、それぞれの項目について、何が出来ていれば評価されるのかを明確に基準として記し、それを予め認識した状態で学習し、自己評価や相互評価なども経て先生が明確な基準の中で評価するというルーブリック評価が注目されているのです。

いかがでしょうか。ルーブリックについて何となく分かりましたか。いま初中等教育でもアクティブ・ラーニングということが盛んにいわれるようになりました。生徒が協調的、能動的に学ぶことで、思考力や表現力、協働的に問題解決する力などを身につけようとしています。しかし、このような学習方法を導入したとしても、目指している力が身についたのかどうかが分からなければ、いずれ形骸化していきます。アクティブ・ラーニングを成功させるかどうかは、評価のあり方にかかっていると思います。その意味で、この「ルーブリック」は、これからのグローバル時代に合わせた教育にとって、とても重要な要素だといえると思います。

※学校の先生方へ
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(2016年7月)

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