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特別レポート

グローバル教育研究会 2014年レポート

グローバル教育研究会とは、グローバル社会で活躍する人材を育てるための教育について、私立の中高の先生方とともに考えるために設置された研究会です。グローバル教育を先進的に実施している学校から、グローバル教育の内容を現在構築中の学校まで、15校30名弱の先生方にご参加いただきました。

研究会の趣旨・狙い

研究会の狙いの一つは、これからの時代のキーワードの一つである『グローバル』を読み解き、私学ならではのグローバル教育を確立することです。一口に「グローバル社会」と言っても、それはいったいどのような社会で、そこで活躍する「グローバル人材」とはどのような人物像なのか。「グローバル人材」になるために必要な力(スキル・マインド)とは何なのか。様々な立場の人が、様々な表現をしている「グローバル社会」とそこで必要とされる力について、研究会としての定義を試みました。

そしてもう一つの大きな狙いが、上記の「グローバル社会」を踏まえた各校独自のグローバル教育を考えることです。常に時代を先取り、社会に有為な人材を育成してきた私学として、加速化する「グローバル社会」にどのように対応していくのか。研究会に参加されている各校が、自校の建学の精神・教育理念を基に、考えを深めていくことを目指しました。

研究会のゲスト講師が考える「グローバル社会で必要となる力」

 研究会は、外部講師による講演+参加者によるディスカッションの形式で進行しました。外部講師には、産業界からの視点や海外留学の視点、グローバル教育先進実践校の事例紹介など、「グローバル教育」を考えるにあたって必要な情報を、複数の切り口から提供いただける方を選定。それぞれの立場で、「グローバル社会で活躍するために必要な力」について、ご意見をいただきました。

(1)産業界からの視点:小杉俊哉氏の主張

グローバルな環境で求められるスキルは、以下の4つと考える。

1.ロジカル・シンキング
2.アサーション
3.リーダーシップ
4.起業家精神


そして、上記の4つのスキルに関連して日本人に決定的に欠けている といわれるのが、

1.自律意識
2.ビジョン
3.アサーション
4.楽しんでやること
5.自国への自信
6.自国の文化の知識

である。

(2)海外留学に関する視点:㈱留学ジャーナル・平岡直子氏の主張

今、様々な企業が、海外留学経験のある人材を採用しようとしている。
それは、企業が求める以下のようなスキルを、留学経験を通じて得る ことができるから。

1.語学力
2.コミュニケーション力
3.柔軟性
4.交渉力
5.課題解決力
6.主体性
7.チャレンジ精神、バイタリティ

(3)国際バカロレアのディプロマプログラム実践者の視点 :立命館宇治高等学校 国際教育担当教頭 東谷保裕氏の主張  

国際バカロレアのディプロマプログラムでは、グローバル人材の要件と言える 以下の力を身につけさせることができる

1.コミュニケーション力、語学力
2.異文化に対する理解と思考の柔軟性
3.批評的・批判的思考力
4.分析的思考力
5.プレゼンテーション力
6.主体性・リーダーシップ
7.クリエイティブ・シンキング

これらの講演でインプットした情報を基に、「グローバル社会」とそこで活躍できる「グローバル人材」について、研究会としての一種の定義を導くための議論が重ねられました。

「グローバル社会」と「グローバル人材」の定義

 「グローバル社会」について考えるにあたり、出された意見は、“すでに現在もグローバル化された社会である”というものでした。経済活動はもちろん日本国内にとどまってはいませんし、文化的交流も行われています。ここから、これから訪れる「グローバル社会」は、現状の社会のグローバル化がさらに広がり進んだものと考え、定義づけたのが以下の表現です。

●【グローバル社会】の定義  

グローバル社会とは、人々が国境を意識せずに経済活動・文化活動・社会活動を行い、国籍・人種・宗教など多様な人々が共に生活する社会。

 今後、「グローバル化」がますます進行し広がっていくと、経済活動に携わっている人々だけにとどまらず、日常生活の中にも及んでくるのではないか、という考えが、上記の定義には込められています。
このように「グローバル社会」を定義すると、そこで活躍できる人材が、すなわち「グローバル人材」と言えます。

●有名なグローバル企業やコロンビア大学を取材し、紙面を作成した「インターンシップ」

グローバル人材とは、多様な価値観や異なる文化をもつ人々の中で、相手を認め、自分の意見を主張しながら、主体的に問題を解決し、新たな価値を創造できる人材。

 国籍・人種・宗教など多様な人々が共に生活する社会になれば、当然、それぞれに異なるバックグラウンドを持つ人々と接していくことになります。その際にはまず、相手を認めること、そして、自分の意見を伝えることが重要となるでしょう。また、そのような社会では、今まで起こってこなかったような問題・課題に直面することも想定できます。その際に、主体的に問題解決に関わり、新たな価値を生み出すことに貢献できることも、グローバル社会で活躍をしていくためには必要と考えられます。

「グローバル人材」に必要な10の力・素養

 それでは、上述の「グローバル人材」になるためには、どのような力(スキル・マインド)を身につければよいでしょうか。講演いただいた各講師の主張や研究会参加者のディスカッションで出された意見を踏まえ、「グローバル人材に必要な10の力・素養」をまとめました。
これらの力(スキル・マインド)は、現在の(グローバル化しつつある)社会でもすでに求められているものではありますが、先に定義したような「グローバル社会」化が進行していく中においては、より必要度が増していくものだと考えています。
[グローバル人材に必要な力・素養10箇条](PDF)

私学として、どのように「グローバル人材」を育てていくか

  今年度の研究会では、「グローバル社会」とそこで活躍する人材像、その人材になるために必要な力について、情報収集・意見交換をし、一定の定義づけをしました。研究会設置の目的・狙いのうち、“これからの時代のキーワードの一つである『グローバル』を読み解く”点は達成したと言えます。

 しかし、グローバル人材に必要な力・素養を育てる教育のやり方は、一つでは決してありません。様々な方法・手段の中から、自校の教育方針や建学の精神、教育内容などと関連付けて、各校が選択し実践をしていくことでしょう。これから各校でますます取り組まれていく様々なグローバル教育の実践を見守りながら、その手法・成果が蓄積されはじめた後に、研究会参加校をはじめとした複数の学校について事例研究をし、“私学として、「グローバル人材」を育てていくための教育実践”の方法について考えていければと思います。

グローバル教育研究会 参加校一覧(50音順)

  鷗友学園女子中学高等学校
  大妻中野中学校・高等学校
  神奈川学園中学・高等学校
  光塩女子学院中・高等科
  佼成学園女子中学高等学校
  駒込中学高等学校
  実践女子学園中学校高等学校
  芝中学校・高等学校
  淑徳中学高等学校
  聖学院中学校・高等学校
  洗足学園中学高等学校
  東京女学館中学校・高等学校
  東京都市大学等々力中学校高等学校
  東京立正中学高等学校
  文化学園大学杉並中学・高等学校
計 15校

講師プロフィール:小杉俊哉氏

株式会社マネジメント・ロジック取締役会長/慶応義塾大学SFC研究所上席所員/元McKinsey&Company,Inc./元Apple人事総務本部長

講師プロフィール:平岡直子氏

株式会社留学ジャーナルカウンセラー
カウンセラー歴25年以上。
自身も英国留学経験を持つ。留学希望者、保護者への講演経験多数。

講師プロフィール:東谷保裕氏

立命館宇治高等学校国際教育担当教頭
大阪府立の高等学校教諭(英語)、大阪府教育委員会指導主事を経て、2008年4月より立命館宇治中学校・高等学校で勤務(外国語科主任)。2011年4月より現職。

[レポート:コアネット教育総合研究所 高市和佳子
2015年1月

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