三人の話には共通している事柄があります。それは、コーチングを教室に持ち込み、生徒への個別対応のスキルとして実践したとき、生徒の反応や行動が変わってきたということです。その変化は、概ね次の三点に集約できます。
- 生徒が自分から行動するようになった。
- 生徒が本音を話してくれるようになった。
- 生徒が積極的に教師との関わりを持つようになった。
こうした生徒の変化は教師たちには驚きだったらしく、言葉の端々に「なぜそういうことが起こったのだろう」という戸惑いが感じられました。生徒の変化は、もちろん教師として大変喜ばしいことなのですが、一方で、なぜ今までこういう指導ができなかったのか、今までのやり方がどこか間違っていたのではないか、という苦い思いも感じていたようなのです。
それにしても、経験を積んだ教師にも予想できなかった生徒の変化は、どのようにして起こったのでしょうか。
「生徒の話をじっと聞く」ということ、その上で「適切な質問を投げかける」ということ、基本的にはその二つだけです。簡単そうに見えますが、三人が口をそろえるのは、「生徒の話を聞くことの」難しさです。そもそも「教師は生徒の話をまともに聞いていない」というのが三人に共通の見解です。なぜなら、教師は生徒の話を聞くためではなく、生徒に何かを言い聞かせるために、生徒と向かい合うからです。
ですから、ほとんどの教師は、生徒の話を聞く技術は全くといっていいほど訓練されていません。そもそも、そういうスキルが必要だという認識すらないといっていいでしょう。これでは教師が生徒の話を聞けないのは無理もありません。教員の資質・能力の問題というより、教員養成の問題だといえます
ともあれ、言葉だけでなく、声の調子や抑揚、感情の動きにも気を配りながら、相手の話をしっかりと受け止めてあげる、そのような話の聞き方を心掛けただけで、生徒の反応や行動が変わり、教師との関係も一段と深くなったという事実をまず確認しておきたいと思います。
(続く) |