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先進校レポート

加藤学園暁秀高等学校・中学校 ウェンドフェルト 延子先生

加藤学園暁秀高等学校・中学校は、静岡県にある中高一貫校である。1983年に開校、1998年には国際バカロレア機構のMYP(中等教育部門カリキュラム)を実践するバイリンガルコースを開設した。2002年に、日本で初めてIBディプロマ(大学進学資格部門カリキュラム)の認可を受けた日本におけるIBの草分け的存在である。

現在、IBディプロマ・プログラムを提供している一条校(教育基本法で定める学校)は国内に5校しかない。その中でも古くから実績を残している学校として、全国の教育関係者から注目されている。

バイリンガルコースの責任者であるウェンドフェルト延子先生に話を聞いた。

バイリンガルコースについてお聞かせください。

暁秀中学校は各学年4クラスですが、そのうち1クラスがバイリンガルコースで、高校まで一貫のコースになっています。中1から高1まででMYPを実施し、高2・高3がディプロマ(DP)を実施します。文部科学省のカリキュラム内容を国際基準であるIBの教育方法によって学習するというのが特徴で、卒業時に日本の高校の卒業資格とIBディプロマの両方を取得することができます。

英語イマージョン教育が基本で、中学段階では全授業の50%前後が英語で行われます。高校では80%近くが英語で行われる授業となります。

IBディプロマ(DP)とはどのようなものですか。

DPは、世界的に認められた大学入学資格の制度です。DPを取得すると直接海外の名門大学へ入学できるため、卒業後の選択の幅が飛躍的に広がります。

IBには目指す学習者像が設定されており、それを中心にカリキュラムが組まれています(図表参照)。まず、TOK=知識の理論、CAS=創造性・活動・奉仕、EE=課題論文という3つのコアカリキュラムがあります。そして、それをベースに、6つの教科群(第一言語、第二言語、個人と社会、実験科学、数学、芸術)が配置されています。

本校では、第一言語が日本語、第二言語が英語というのが原則ですが、一部、英語を第一言語として学習している生徒もいます。それ以外の教科は日本の学習指導要領と対照させてシラバスを組んでいます。

TOKについて詳しく教えてください。

TOKでは、人はどのようにしていろいろなことを知るようになるのか、私たちが理解していると言っていることは、何を根拠にし、どのようなプロセスを経ているのかを考え、各種の分野に適用し、分析的に考え、討論していきます。卒業生も含め、TOKで学んだ生徒は異口同音に、どの教科よりもTOKが一番面白いと言います。学んだ論理構成のスキルを、早速家庭での会話に応用して、お母さんを困らせる生徒もいます。(笑)


生徒同士がディスカッションする授業が展開されている

CASとはどのようなものですか。

Creativity、Action、Serviceの略で、創造的活動や奉仕活動などを課外で行うというものです。まず自分で計画を立てて教員に提出します。教員はそれがCASとしてふさわしいかをチェックし、認められれば、生徒が実行に移します。活動を実施したあとは、オンラインでそのレポートを提出するようになっています。

たとえば、募金活動をして海外に寄付をするような活動をする生徒もいます。サッカー部で練習メニューを考えるという生徒もいます。3つの活動をバランスよく行うことになっているので、自分の不得意な分野にチャレンジすることを促すことになります。スポーツが不得意な生徒が体育祭の応援団長にチャレンジするといった例のように、何かに挑戦してみるという風土ができるのがいいですね。


DP最終評価の筆記試験のための少人数対策授業

IBのプログラムは生徒にとって負担は重くありませんか。

確かに大学で学ぶような高いレベルの内容をカバーしているため、生徒にとっての負担は軽くはありません。しかし、努力によって十分克服できます。中には、ちゃんとクラブ活動とも両立し、吹奏楽部でしっかり実績を残しながら、IBのカリキュラムもこなしている生徒もいます。


バイリンガルコースの教室の前には各教科に関する掲示がある

MYPやDPの評価はどのようにするのですか。

IBのプログラムは、まず評価の観点や規準が設定されているところから始まります。小テスト、定期テスト、各種プロジェクトなどの課題は、この評価規準に基づいた絶対評価で評価します。教員はあらかじめ生徒に評価の規準を伝え、学習後にも評価をフィードバックします 。学期ごとの保護者を含む面談では、成績と評価内容を確認しています。

DPの最終的な評価は学校での内部評価に加え、全世界共通のテストを受験し、IB機構が採点評価します。ただし、ただ知識を問うというだけのテストではなく、記述式が中心となる内容で 、原理・原則をきちんと理解しているか、自分の考えを表現できるかという点を見られます。

IBと日本のカリキュラムとの違いは何ですか。

これまでの日本の教育は、決められた目標に向かって山登りをするように知識を積み重ねることを重視してきたと思います。しかし、これからは答えのない世界で自分の力で道を切り拓いて行くような力が求められると思います。山登りというよりは、海に放り込まれて、どうやって泳いでいくかを自分で考え行動するということでしょうか。
IBのカリキュラムは、そのような力を身につけるものだと思います。

加藤学園暁秀で、長年IBで成果を出し続けている秘訣は何ですか。

IB導入当初は、今までにないことをやるという居心地の悪さを教員も感じていました。しかし、こういう教育を目指したいという目標が明確にあったので、継続してやって来られたと思います。そして、IBで求めている学習者像を教員自身が体現していることが大事です。生徒に求めるのであれば、教員自身もその姿に近づいて行かなければなりません。特に、「心をひらく」「挑戦する」ということを私たちは大切にしています。

先生方の日々の努力が素晴らしい成果を支えているのですね。ありがとうございました。

加藤学園暁秀高等学校は、これまでにハーバード大学、エール大学、ロンドン大学をはじめとして世界の有名大学へ多数の卒業生を進学させてきた。同時に、国内の有名国公立大学、私立大学にも多数合格させている。そこには、IBという国際標準のカリキュラムと日本の教育の良いところをうまく組み合わせた絶妙な教育プログラムがあるからではないだろうか。

授業を見学すると、びっくりするほどの英語力で、ネイティブの先生とディスカッションをしている。英語力とともに、自分の考えを表現するコミュニケーション力が身についている姿を見ると、将来はグローバルに活躍してくれるだろうと頼もしく思える。

[聞き手:コアネット教育総合研究所 所長 松原和之
2013年10月取材

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