芝学園の場合

芝中学校 校長 春日利比古先生へコアネット教育総合研究所 福本雅俊がインタビューしました。

■校風調査は本校の立ち位置をつかむのに絶好の機会

春日先生 私が校長に就任してまもなくの時期に、コアネットの福本さんから校風調査を紹介していただきました。「自分の学校が、中学受験マーケット(受験生保護者や塾)からどのように見られているかを客観的に分析・報告する調査である」との説明を受け、本校の立ち位置をつかむのに絶好の機会だと思ったことを覚えています。
当時の私が持っていた印象は、「本校の認知度が低いのではないか」ということでした。創立100年以上の伝統ある男子校ではありますが、アンケートの対象範囲は一都三県の日能研生。知られていてもせいぜい名前くらいではないかと思っていました。

コアネット福本 実際の分析結果は、認知度については非常に高く、幅広い地域・偏差値帯で知られているというものでしたね。春日先生の予想を良い意味で裏切る結果でした。そしてその「持たれているイメージ」も、設定されている31項目のほとんどにおいて平均値を超える“良いイメージ”を持たれていました。

春日先生 そうですね。認知度は高い、かつ受験生保護者の方々が本校のことを非常に好評価してくださっていると分かったときは、正直言って驚きました。 ただ、その良い結果報告だけで終わらなかったのが、コアネットさんの鋭いところでした。他校とのイメージ比較から、「『芝中学校と言えばこれ』と言うような特徴あるイメージは持たれていない」という点を指摘してくださったのです。

■”万遍なく良いイメージ”では学校の特徴が見えない

コアネット福本 男子の御三家であれば、学習・進学のイメージはもちろん共通して強く持たれていますが、開成であれば「理数系教育」、麻布は「文化祭等の行事に力を入れている」の評価が突出しています。各校の特色が、持たれているイメージにも色濃く出ているというわけです。 しかし、残念ながら、芝中学校の場合は、どの項目についてもまんべんなく評価が高くなっていた。学校が持っている特徴・特色がうまく受験生保護者に伝わっていないのでは、と考察しました。ここから、学校として特徴となるイメージ=スクール・アイデンティティを確立し、そのイメージを具体的な言葉・活動で広報していくことを提案させていただきました。

春日先生 スクール・アイデンティティに近い「A-I校心」という教育目標は、当時もすでに持っていました。ですが、「A-I校心」とはどのようなものですかと聞かれた際に、全教員が共通して理解し、同じ説明ができるかと言われると、恥ずかしながら大変怪しい状態でした。入試広報部の教員でさえ、9項目をすべてスラスラと言える者は少なかったかもしれません。 そこで、コアネットさんにもご協力をいただきながら、本校のアイデンティティを再度考え、その伝え方について考える教員研修の機会を、一部の教員対象という形ではありましたが、設けました。

(A-I校心の表)


■既存の教育目標を再度確認し、魅力が伝わる広報活動へ

コアネット福本 教員研修では、校風調査の結果報告と、スクール・アイデンティティの構築の仕方を説明させていただきましたが、具体的に中身を考えていく作業は先生方にグループワークを通じて行っていただきました。先述の「A-I校心」の9項目のうち特に重要と思う3項目を選び、それらを育む具体的な教育内容を考える、というワークでは、どの先生方も真剣に、熱く、学園への想いを語ってくださっていましたね。

春日先生 先生方一人ひとりの教育に対する考え方や価値観が浮き彫りになり、とても良いディスカッションの場となりましたね。でも私にとって最も衝撃的だったのは、当時の本校の広報活動内容からアイデンティティをチェック・評価してもらったパートです。相当な辛口評価を受けてしまいました。

コアネット福本 スクール・アイデンティティの構築は、作り上げることがゴールではありません。広報活動を通じて、学内で定めたスクール・アイデンティティを発信をし、受験生保護者や塾といった外部に届かないと意味がないのです。先生方に、アイデンティティを構築しただけで終わった気になって安心するのではなく、次のアクションを取っていただきたかったため、あえて厳しめに広報活動を評価させていただきました。

春日先生 いや、結果的には厳しく言ってもらえて正解でした。そのおかげで入試広報部が奮起し、『芝漬け』や『絶妙な教師力』といった、本校独自の味のある広報キャッチフレーズが誕生したのですから。ホームページもリニューアルし、まめに更新・発信していくようになりました。福本さん、本校の現在の広報活動はいかがですか。変わったでしょう?

コアネット福本  『芝漬け』のポスターは、フェア会場で他校のものと見比べても、オリジナリティが光っていていいですよね。なにより、芝中学校の学内の雰囲気がそのまま伝わってくるかのような作品に仕上がっていることがすごくいい。弊社での入試広報に関するセミナーでは、好事例としていつも紹介させてもらっているんですよ。

春日先生 辛口評価だったコアネットさんにそう言っていただけると嬉しいですね。おかげさまで、受験生保護者の方、教員、在校生保護者の方にも好評です。 今年の秋に行われる校風調査では、2009年からの5年間で本校が強化したスクール・アイデンティティや広報活動がどのような結果となって実を結ぶのか、5年越しの効果検証のつもりで、結果の報告を楽しみに待っているところです。

コアネット福本 春日先生、ありがとうございました。

 

取材協力

芝中学校 校長 春日利比古先生
 

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コアネット教育総合研究所
横浜研究室 室長 福本雅俊

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